M女の久実さんの欲望を叶え、
妄想をリアルにし、満足してもらう。過去には5回会ったが、回数が増すにつれ、演出には仕込みが必要となり、手間もかかるようになった。
それを面倒だとは1度も思わなかった。
俺にとっては、久実さんこそがソフトなM女を理解するうえで最も重要な女神様だったから。
公園、公衆トイレ、マンションの階段、カラオケ、居酒屋のトイレ、友人宅と、
様々な場所とシチュエーションで、友人まで登用した。
彼女の妄想と欲求は前よりも増した。
当然だ。僕がそうさせた。
1週間も前から予約を入れてくれた久実さんと会えるのは今回が最後。
さて、どう悶えさせようか。この前はヨダレを垂らした。
今回はヨダレを滝のように流させたい。あげくには白目までむかせたい。
M男の俺がM女を昇天させ、恍惚の表情にまで導こうとしている。
M男の俺は、かつてあるM女に、これでもかというほどにいたぶられ弄ばれ性玩化され、意識を失いかけた。
それはS女に葬られるよりも刺激的なもので、M女なのに…M女にまで…と自分で自分を追い込んだ結末の様。
途中からSだのMだのは関係なくなった。
性欲をぶつけまくるその行為に、ぐるりと回って最後には、
性欲むきだしの貪欲な女性に葬られる現実に、意識が飛んだ。
ただ俺にはマイナス要因がある。いくら策を企てても払拭できない要因がある。
それは俺がデリバリーホストだという身柄だ。
金に雇わるプロという事実だ。
誰とでもやってきた不潔なカラダの持ち主だという経歴だ。
ベストは素人だ。それを職業としない男性に弄ばれ、性欲の捌け口にされるのが望ましい。
だから今回も友人を登用した。最後ということで2人を揃えた。
プランができあがるにつれ、さらに人員が欲しくなった。
男は俺を含め計4人。残りの1人はやはり俺とプレイで息が合うタクトさんにお願いした。
久実さんとは駅前の本屋で待ち合わせをし、車で拾い、俺の家へと向かった。
途中でスーパーに寄り、鍋の具材を揃えた。
本当は家へ誘うのは禁止されているが、最後だから。
我が家は友人の圭祐と雅紀が温めていてくれた。
二人はベージュのコートを着た久実さんに笑顔を送り、圭祐が「久しぶりです」と言った。
カラオケルームで久実さんにクンニしまくったのが圭祐だ。
暗い室内で目隠しされての行為だった為、久実さんは顔を覚えていなかったが、
瞬時に記憶は遡り、目の前で笑う若い男とあの時の乱暴な舌づかいがリンクされるまで時間はかからなかった。
頬が若干染まったように見えた久実さんに雅紀が歩み寄り「コートかけますよ」と言った。
「おまえそんなに気が利く男だったっけ?」と俺が言うと、
「デリホスはおまえより俺の方がきっと向いている」と笑った。
キッチンはリビングに設けられている。
久実さんと俺が2人でキッチンに立ち、鍋の準備をした。
そこにいる3人の男にいずれ弄ばれることを期待しながら立っていたに違いない。
豆腐や野菜を切る仕草は様になっていたが、すでに妄想が駆け巡ってしまっていたのか、
どことなく落ち着きが無く、「久実さんの後ろ姿たまらないですね」と言った雅紀に返す言葉も探せず、
ただ恥ずかしそうに振り返るだけだった。
鍋はローテーブルに置かれた。
久実さんの横には俺が座り、対面に圭祐と雅紀が座った。
鍋をたいらげるとみんなで楽しく会話をした。
ミタさんスゴすぎるよね、とか、マナちゃんのお母さんは娘を働かせすぎだろ、とか、
芸能やドラマのネタで盛り上がった。
「DVD観ようか、エロいやつ」と俺が言い、奥の和室からDVDを持ってきた。
それはこの日の為に俺が編集したもので、映っている被写体は全篇にわたり久実さんだ。
バイブが挿さったままM字開脚で椅子に縛られた姿や、フェラさせられている姿。
ペニスを挿入され喘ぎまくる姿が収まっていて、それらは全て今までのプレイ中に携帯で撮影したものだ。
オープニングからいきなり目隠しでM字開脚拘束が流れた。
5秒で圭祐と雅紀が「スゲー」と言うのは当然。
久実さんも観ていたが、それが誰なのか判らない様子だった。
「久実さんだよ。これ久実さんだよ」。
圭祐と雅紀が久実さんを見た。彼女は驚き、表情は瞬時に変わったが、画面から目を外すことは無かった。
「久実さん、サイコーっす」。
「ガチでエロすぎっす」。
「おまえらもう勃起してるんじゃねぇの?笑」。
「してる」。
「俺も勃ってる」。
「久実さん、こいつら久実さんの動画観て、もう早勃起してるよ」。
彼女は肩をすぼめ、目が虚ろになった。
俺は圭祐にメールを送った。
<足のばして、久実さんの股間を突っついてやれよ>
まもなく、圭祐の足が久実さんの両膝に割り込みながら滑り込んだ。
雅紀は画面に釘付け、圭祐は画面の彼女とリアルな彼女を行ったり来たり、
俺は3人を面白がって見ていた。
やがて、久実さんから息が漏れると、雅紀が彼女を見、そこで行われていることに気づいた。
俺は横から胸を揉みだし、体を押し倒すと、圭祐と雅紀が席を立ち彼女に近寄った。
3人で服を丁寧に脱がせた。黒いパンストは雅紀が脱がせ、圭祐がショーツに手をかけたが、
俺が「まだ早いんじゃね?笑」と制止し、露わになった胸を揉みだした。
「綺麗な脚!」と言った圭祐が右脚を抱え込み、舌を這わせると、あぁぁんと声を漏らした。
雅紀はショーツの上から股間を指で突っついていた。ショーツにはすぐにシミがつき、濡れ具合が一目瞭然だ。
15分ほど3人でカラダじゅうを愛撫すると、
「任せた、あとは好きなように」と俺が言い、テーブルを壁に寄せスペースを確保した。
そして奥の和室から商売道具が入ったバッグを持って来て、中の物を取りだした。
カーペットにローターやバイブが転がり、コンドームが散らばった。
俺が部屋から出た2時間に2人は久実さんに何をしたのだろう。
詳しいことは聞かなかった。普通の成人男子がやりたいようにやったに違いないけど、
久実さんは何回イッたのだろう。
俺がタクトさんを連れて部屋に戻った時、リビングにはパンツ1丁の雅紀、
久実さんと圭祐は2人で仲良くお風呂に入っていた。
奥の和室のベッドが散らかっていた。「誰がやったんだろう」、それも訊かなかった。
2人がバスルームから出てくると、タクトさんの姿に驚いた久実さんだった。
「第1部どうだった?」と圭祐が久実さんに訊いた。
「そういうの訊くなよ・笑」と俺。
「……ステキだったよ」と久実さん。
「そう、良かった」タクトさんが笑った。
そこから1時間は3人の男がTVを観ながらくだらない話をしていた、
木9ドラマ「ランナウェイ」が終わり、ニュースを観ていた。
パンツ1丁の男が4人。
俺とタクトさんが横に並び、
向い合って圭祐と雅紀が並んであぐらをかいていた。
2列を遮るものはテーブルではなく、女体。
久実さんは全裸で縛られたまま、男4人に囲まれていた。
ドラマを観ながらくだらない話をする俺達を全裸拘束された久実さんはどんな気持ちで見上げていたのだろう。
圭祐は手持ちぶさたに乳首をつまんだりしていたし、
雅紀はソコが濡れているかどうか何度もチェックしていた。
「濡れてる・笑」。「ほんとだ」。
それを聞いてローターをソコに挿したままにしたのはタクトさんだ。
「あっ、コレ抜けるんじゃない?だんだん出て来てる」と雅紀。
無意識なのかサービス精神なのか、久実さんの下半身がクククッと動くと、出かけたローターはまた元の位置にヌルリと入り込んだ。
「技つかった・笑」と雅紀。
久実さんも悶えながら照れくさそうに笑った。
「おもしれぇ~」と圭祐。
俺がかたてまに電マをクリに当てながらTVを観た。
「それやったらスグにイクかもよ」とタクトさん。
「じゃあそろそろ舐めようかなぁ」。
そう言うと俺はクリを舐め始めた。両乳首を圭祐と雅紀が揉んだ。
タクトさんは両脚にやさしいタッチで指を這わせた。
何度も「……イキソウ……」を聞いた。その都度、みんなの手や舌が止まった。
焦らしに焦らした。
「じゃあそろそろ」。タクトさんがゆっくりパンツを脱いでペニスを挿入した。
俺達は彼女の周りを囲んだ。
1ストローク3秒ほどの超スローな挿入はあきらかに弄んでいて、お互いが頂上を目指すものではない。
両脚をV字に大きく開かされ、脚首を高く持ち上げられたままの状態でのスロー挿入だった。
俺がクリを触った。早く動かすとたちまち「イキソウ……」が聞こえてくる。
だから指を当て、スロー挿入のリズムに合わせて、軽く押し込むぐらいのもので、
タクトさんのペニスが押し込まれると指を離し、引かれる時にだんだん力を入れて押しこむかんじのもの。
大洪水になっているがスローなストロークすぎて、ビチャビチャとした淫音はしない。
だけど久実さんの喘ぎ声は尋常ではなく、忙しいリズムでかなり大きめな声で奏でられた。
圭祐と雅紀に揉まれる両胸。転がされ摘まれる両乳首。
片手が余った俺は太ももやヘソから土手をやさしく触った。
スロー挿入なのに、イッてしまった。
あっという間だった。
「イキソウ」のサインに止めたはずだったのに、勝手にイッた。
それでもおかまいなしにスロー挿入を続けるタクトさん。
しばらくして2度目の挿入昇天の時を迎えそうになると、
「よし、じゃあ腰入れる!」と言い、本来の腰の動きを見せた。
俺は久実さんの表情をじっと見つめた。白目をむき始めている。
いいぞ久実さん…もっと感じて。こないだどこまで感じられるか底を知りたい、って言ってたよね。
ヒーターで温められた室内に、久実さんは全裸でカーペットの上に放心状態で横たわっていた。
男達は酒を飲み、猥談から政治ネタまで、ランダムに語られた。
「ねぇ久実さん大丈夫?」と俺。
「うん」。
相変わらず男達に囲まれて、全裸で転がる久実さん。
拘束はされていない。床に座るなりソファーに座るなり、自由に居場所を決められたはずなのに、
自分からすすんでその場所を選んだ。
「ねぇ久実さん、一緒にシャワー浴びようよ。俺に久実さんのカラダを洗わせてよ」
「うん」
バスルーム。バスタブの中で久実さんを抱いた。
「こんなふうにすること無かったね、俺、久実さんを驚かせながら萌え萌えにさせたくて、そればっかりで」。
「いつもスゴイよ。涼汰君のコーディネートはホントにステキすぎるよ」。
「俺ね、今年いっぱいでデリホス辞めるんですよ」
「……、そうなの?なんで?」
「いろいろありますよ」
「彼女が欲しくなったの?」
「……それもあるけど……」
「もう会えないの?」
「うん」
「……そっかぁ……」
「ねぇ久実さん、お風呂あがったら、おもいっきり俺とHしてよ、まだできる?・笑」
「まだまだできるよ、どうしたの」
「最後はさぁ、久実さんと普通のHをしてみたい」
俺はバスルームのドアを開け、タオルも巻かずにリビングへ行き、3人に、
「ごめん、今日はありがとう、2人だけになりたいから、もうそろそろ…」と言った。
「承知しました」とミタを真似た圭祐。こいつはいつも流行ネタを披露する。
バスルームに戻り、俺が久実さんの身体を洗ってあげていると、いきなりじゃばらのドアが開き、
「久実さん、今日はどーもでしたぁ」
「久実さん、また会いたいです」
「久実さ~ん、今日はサンキューでぇ~す、またシクヨロ~」これは圭祐。今度は流行りのチャラ男を披露した。
「おまえらドア開けんなよ、ドア越しで言えや」と怒ったふりをしてみた。
久実さんは3人それぞれに笑顔を送り、ペコリと頭を下げた。
バスルームからあがった2人はタオルでお互いの身体を拭き合うと、タオルも巻かずに全裸のままリビングに行き、
冷蔵庫から取り出した炭酸を手に、和室へと向かいベッドに寝転んだ。
きつくきつく抱き合って、深い深いキスをして、恋人同士のようなセックスをした。
疲れきった久実さんは俺の腕枕で眠ってしまった。髪を撫でていると俺もいつのまにか眠ってしまった。
俺の部屋。2人で朝を迎えた。買ったばかりのベッドで朝を迎えた女性第1号は久実さんだった。
時刻は午前5時30分。先に起きた俺は久実さんの脚から軽いマッサージを始めると、彼女が起きた。
脚、お尻、腰、背中、首。全身を揉みながら、それまでの2人の様々なプレイを思い出しながら話した。
そろそろ出勤の準備をしなくてはいけない時間。久実さんの家を経由するとなるといつもより30分早く家を出なくてはいけない。
「じゃあ準備しようか」。上半身を起こした彼女を抱きながらキスをした。
そして両乳首にもキス、さらにそのまま態勢を下げ、股間に顔を埋め、ソコにもフレンチキスをした。「チュッ」と。
午前8時。久実さんを家に送り届けた。別れ際に「昼休みにメールします」と言うと、
「うん、待ってるね」と言い、頬にキスをしてくれた。
昼休みに約束どおりメールした。
昨日、彼女の身体に触れた4人の男のフルネームと3人の男のメアドを添付した。
関係を持った異性の名前は知っておいた方がいい。
名前も偽名で、顔すら見せてはもらえない異性と関係を持つことを拒めない俺の世界に、彼女は棲んではいない。
全裸で拘束されなければ満足しない彼女。男の俺でも不安を感じる行為を彼女は好むが、やはり危険だ。
安心できるパートナーを紹介したい。これからも俺を選んで欲しいけれど、汚れた涼汰より素人の男を彼女は選ぶだろう。
圭祐か雅紀か、そのどちらかをパートナーに選んで欲しかった。
久実さんとのおそらく最後の時間は、そんなふうに過ごしました。
残り1ヵ月、今までに指名を何度もいただき、情が見え隠れし始めた女神様達と最後のプレイをする度に、
こんなセンチメンタルな気分になっちまうのかな。
もしかしたらそんな感情、デリホスには不要なものなのかもしれないな。ドライであれ、クールであれ。
俺はやっぱりデリホスには向いてはいないんだろうな。
会った女神様全てが、俺の身体のあちこちに棲みついちゃう。
今月、あと何人にお別れを言えるかな?
とりあえず今日は、肝臓あたりに棲んでいた久実さんに「さよなら」を言えたけど。