「元気だった?」と愛くるしい笑顔を向け、
会ってすぐにキスをせがむ彼女。
服を着たまま抱き合って、
お互いの衣服の匂いを感じながら、
キスの止め時を見失うほどの長めのキスだけど、
ゆっくりとキスを楽しみたい彼女だから、
いつも彼女にキスタイムを委ねている。
唇が離れると「起ってる?」と訊く。
「うん」と言い、見つめていると、
彼女の手が僕の股間にのび、勃起を確認すると笑みを浮かべ、
「我慢できないの?」と訊く。
そんなシーンを今まで5度も重ねると、
訊かれる前に僕から先に告げたくなる。
昨日は彼女の家からは七つも離れた駅で待ち合わせた。
「近所の人はここまでは来ないから」という安全な場所への道程に、
大型ショッピングセンターを四つも越えて来て、
二人ともが初めて見るロケーションの中にいた。
其処へは、僕は車で、彼女は電車で来た。
駅前の賑やかなエリアを肩を触れさせながら歩き、
涼もうと入ったデパートのファストファッションショップで、
彼女はブラトップを買い、僕はその色に合わせてTシャツを買った。
デパートを出てからは、人っ気の少ない方を選んで歩き、
会話が途切れることなく恋人同士のように見知らぬ町を仲良く散策した。
右も左も分からない町を歩いていると旅行気分になったけど、
あいにく記録的猛暑の夏の日のこと、僕らは歩くだけで汗だくになってしまった。
日差しを避けられる適当な建物を探していると、
昭和テイストを醸し出した木造3階建ての小さな雑居ビルを見つけた。
壁面には7つのスナックの看板が貼りついていた。
一階の通路を左右に挟むように店が配置されており、
通り抜けができる通路の出口のコンクリート床には、注がれた日差しが溜まっている。
一階には四店舗あり、どの店にも女性の名前が付けられていた。
「こういうお店、最近は見なくなったなぁ」と、昔を懐かしんだ彼女。
「日曜だし、昼間だし、誰も来ないよね」と僕は重厚な木製のドアにもたれ、
いつもなら彼女から切り出す言葉を昨日は僕から発した。
「我慢できない」。
白昼、汗まみれの服を着たまま抱き合ってのキス。
案の定 僕の股間をまさぐってきた彼女の手に“興奮”を伝え、
外から見えない場所に移動すると、彼女のショーツを下し、そのまま立ちクンニをした。
昭和のノスタルジーに包まれた二人。
その時の二人を写真に撮ったなら、さぞかしステキな写真が撮れたに違いない。
子供の頃は、こういう雑居ビルはなんだか悪い大人達がお酒を飲む場所ってイメージがあったの。
大人になったらこういう木造の雑居ビルが無くなって、鉄筋の高層飲食店ビルで飲んでいたけど、
まさかこんな場所でクンニされるなんて思いもしなかった。
彼女は女性の名前が書かれたドア横のカンバンを見ながらそう言った。
彼女がその木造雑居ビルを怖がっていた少女の頃には、
地図が無ければ、今どこを歩いていて、近くに何があるのかなんて分かるはずも無いけど、
今はスマホさえあれば何だってわかる。
画面に現在位置を表示させると、地図をスクロールさせ、
近くにあるホテルを探し始めると、歩いて10分程のところに二つのホテルを見つけた。
知らず知らず足早で目的地に向かっていた二人は、
部屋に入ると まっさきにシャワーを浴びた。
青いレバーしか回さなかったから、冷たさにキャッキャ言いながら水浴びをした。
ホテルでは3時間じゃれあい、彼女は三度果ててくれた。
いつものようにマッサージをしていると、
古びた雑居ビルでのクンニの時にはあれほどベトベトしていた脚が、
エアコンで冷やされてサラサラになっていた。
ホテルの部屋からタクシーを呼び、駅に隣接した駐車場まで行き、
僕の車でホームタウンへと二人で戻った。
二人だけで、近いけど見知らぬ町への小旅行。
なかなかいいもんですよ。
猛暑つづき、皆さんお身体おだいじに。