雪国で暮らす民は、どの地方の民よりも春を待ち遠しく思っているというのに、
一昨日迄の気温ときたら10℃を下回り続けていた。
それが一変、一瞬ではあったけど昨日は22℃に達する気温になった。
北国の春ってやつも随分と気まぐれだな。
朝方には、気まぐれを起こす前触れに雨を降らせた。
それもほんの一瞬の通り雨。
それに濡れた者も、それを知る者さえあまりいない。
でも僕らは確かにそれに濡らされ、彼女の髪が若干カールした。
既婚者の彼女は、僕と居る時が一番楽しいと言ってくれて、毎回笑顔をくれた。
でも実は、夫からのDVに長い間、悩まされていた。
背中や下半身のいたる所についたDVの痕跡に 僕は「早く消えろ」と願いながらキスをした。
授かった命をDVで失った時のことを「あれはあれで良かったの」と吐き捨てた直後に、
大粒の涙を流し、ベッドに突っ伏してすすり泣いた。
僕は震える彼女を覆うように抱きながら、かける言葉も見つけられなかった。
僕は彼女を心の底から楽しませようとしたし、感じさせようとした。
それは彼女の苦労を知っていたからだ。
行為中の反応はどの女神様よりも気になったし、
着替えの時もペットボトルの水を飲む時も、
部屋を歩いている時まで気に賭け、目で追った。
離婚調停を申し立てたのを機に、夫と別居した彼女は、
小さなワンルームを借りた。
何事にも自制しなければいけない期間、僕らは注意をはらって会った。
人の目が気になる場所では待ち合わせは絶対にしなかった。
遠巻きで目が合っても見ず知らずのふりをして、目的地へは距離をとって向かった。
背後を歩く全ての人を疑い、されてもいない尾行を巻くように歩いたけど、
破産に追い込まれるほどの借金を抱える夫が、誰かを雇うとは思えなかった。
半年の調停後、離婚が決まった。
昨日、僕と彼女は、三か月ぶりに会った。
彼女は故郷を離れ、東京へ行く。
最後に会いたかった男が僕だった事は とても嬉しいけど、
パート先でも、友人の友人でも、僕以外の男を見つけられなかった事に、
閉ざされ続けた三年間の結婚生活を垣間見た。
引っ越しの準備を全て終わらせ、がらんどうな彼女の部屋。
外は朝になりかけの藍色に染まっていた。
部屋の中は藍よりも更に深みを増した紺色の世界。
そんな中で僕らは抱き合った。
彼女を駅まで送ろうと駐車場に向かう途中で、
誰も知らない一瞬の通り雨にあたった。
駅の東入り口に消えた彼女の後姿はボストンバッグ一つと身軽だった。
身軽になって良かったね。
彼女を心から応援してる。
そして、彼女と少しでも近い状況にある読者の女神様がいたら、
頑張って!と、応援します。
文字でしか送れないけど、ごめんね。
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Modern Romance - Walking In The Rain
音楽ライターの仕事で古い曲を聴きまくってます。
80年代、良い曲が多いですね。
今日はクンニ画像が少なくて、ごめんね。
http://youtu.be/B8VhMJwCqrQ