※いつものような画像掲載は、震災を察し、まだ自粛いたします。
※今回は彼女のことを女神様とは呼ばず、名前で呼びます。
敬語で話すのを嫌い、お互いを名前で呼び合っていたから。
※次回の画像掲載は、麻由美が好んだフィンガリング画像となります。
麻由美と僕が初めて会った季節は春。
麻由美について。
全身に愛撫されるのが好きだった。だからキスも好き。
クンニも好んで、とりわけ指を入れながらのクンニではカラダを波打たせた。
セックスは許されなかった。
その行為は契を交わした相手のみ。愛がなければセックスはしないと言った。
それは 既婚者で親でもある麻由美が自分自身にひいたボーダーライン。
モラルは人の数。崩壊は欲望の数。明かしてはならない矛盾は其々の記憶のみに生きてるね。
子供らが成長し、家族其々の時間に干渉しないようになると、
麻由美は“女”としての自分を見つめ直し始めた。
彼女が線引きしたボーダーラインをはみ出さない領域で愉しみながらブラッシュアップ。
麻由美は いつも、いちゃいちゃしたがった。
僕は彼女が決めた矛盾とも思えるボーダーラインを喜ばしく思い、
許された領域内で戯れては、麻由美をちやほやした。
やがて彼女に幸せな変化が現れた。
娘と共にショッピングに出かけ、娘に選んでもらった服が似合うように、
ダイエットに励みだした。
僕の目にはその変貌が明らかに映った。
会うたびにスリムになるシルエットを僕は褒め称えた。
結婚をして子供もできて、
それまで幾度も恋をしたはずの彼女には、
どうしても忘れられない男性がいた。
恋を想う時に、いつも現れるのは初恋の君だった。
ずっと思いを寄せていた彼に告白し、C学2年の春から交際を始め、
別々なK校に通い始めた1年の春には別れてしまった。
都会生まれのK校のクラスメイトに彼女が告白されたのが破局の原因。
結果的には彼女から一方的に別れを切り出し、新しい恋をスタートさせた。
☆
それを聞いた僕はね「勝手だなぁ」と笑っちゃったよ。
「でしょ?」と苦笑いを返す彼女。
恋愛経験の少ない僕がついつい首を傾げちゃった。
「ふったのに忘れられないの?C学生の恋なのに?」って僕が訊ねたら、
「初恋だから。優しかったの、とにかく優しかったの」って。
麻由美はね、誰と付き合っていても初恋の彼と比べてしまっていたんだってさ。
二十歳を過ぎて付き合う人にも、初恋の彼と同じ癖を持つ男性や、
雰囲気が似ている男性を選んだんだって。
彼との思い出は山ほど聞かされたよ。
マフラーのプレゼント交換をしたC2のクリスマス。
ダッフルコートで二人が歩いた冬の道。
洋楽ファンだった彼が、邦楽アイドルの曲ばかりを聴いていた彼女に送った曲の数々。
中でも二人で聴いたベイシティローラーズの話は、何度も語ってくれたんだ。
ローラーズの話になると、彼女は熱くなった。
麻由美と同年代の何人かの女神様にも熱狂的なローラーズファンがいる。
時代を飾ったとはいえ、アイドルバンドだったはず。
調べてみると本国イギリスもさることながら、日本での人気が異常過ぎたようだね。
女神様達の口からローラーズの名前が出る度に、帰って曲を聴くことが多くなって、
いつのまにかシングルリリース曲は全曲おぼえちゃった。
想い出を語った後はいつも、
「でも、あの人はそんな事とっくに忘れてると思うし、今更私と会いたいなんて思うはずないよ」と寂しげに言ってた。
僕がその彼にどことなく似ていたらしいんだ。
麻由美が僕と何度も会ってくれた理由は、簡単に言うとそういうことで、
みるみるうちに若さを取り戻していったのも、僕の存在ではなくて、初恋の彼に要因がある。
会いたいと思う気持ちが強くなったんだよね。
日に日に募ったんだよね。
いつのまにかお腹に巻かれてしまった脂肪のチューブを短期間で2本も取り除き、
プルプルプルだった二の腕は、プルッとシャープになっていたよ。
「もうすっかり準備OKだね、その人といつ会うの?」って僕が訊くとね、
「会いたいけどどこに住んでるのかもわからないよ」って切なげに言うから、
「探さないの?」って、背後から抱きながら訊いたら、首を横に振ってね、
「私からふったんだよ、よくよく考えたら会えないよ、勝手だねって涼汰も言ったでしょ」って。
「でも、ずっと想っているんでしょ?、麻由美をそこまで磨かせた男なのにね」
僕は彼女の背中にもつれながら張りついた髪の毛をほぐしながら言った。
そして、長ーい台詞をほぐした髪の毛を揃えながら言ったんだ。
「懐かしい曲が突然耳に触れて思い出すのは誰しもがあるね。
だけど、食器洗っている時に想ってしまったり、
服を買う時に、この服を着て彼と会いたいって想うのってどうなの?
今では週に一度はいつのまにか考えちゃってるんでしょ?
それって、それまでの人生で蓄積された花粉が消えずに、
ある日突然リミッターを超えて、その日から何の前触れもなく花粉症になっちゃうみたいなものでさ、
そうなったら毎年毎年、特に麻由美の場合は春になったら無性に会いたくなるよ。
今の麻由美は綺麗になったよ、今会うのがベストでしょ。
麻由美が若さを取り戻したのは彼のおかげなんでしょ?
今の気持ちを言うか言わないかは麻由美の勝手だけど、
もし俺がそれを聞いたら、めちゃくちゃ嬉しいんだけど」
僕の長台詞をうんうんと頷いて聞いていて、即座には返事はしなかったけど、
「会いたいよ、すっごく会いたい」って言ったのは、
帰り支度を始めた麻由美が、春色のブラジャーをゆっくり着けている時だった。
「会うだけ会ってみなよ、探すだけ探してみなよ」
ピンストライプの白いYシャツに袖を通しながら僕が言い、
ソファーの上に置かれたジャガーグリーンのタイに手をのばしながら、
「メタボなおじさんになっていても笑って話すんだよ」
「やっぱりそうなってる可能性あるよね、覚悟してるよ」
ベッドに腰掛け、伸ばした爪先にストッキングを被せながら言ったんだ。
何週間かの後に麻由美と会った。
「どう?初恋の君は見つかった?」
指とクンニで果てた後、まどろむ麻由美に訊いた。
ベッドで他の男の話をするのはデリカシーに欠けるタブーな行為だけど、
彼女の場合は許される。
麻由美は、僕をその男性だと思い込んで行為に没頭しているふうもある。
「探し方が解らないの、古い友達とも今は連絡とってないし」って彼女。
実はね僕。
彼を探してあげたんだ。
Bay City Rollers / Bye Bye Baby
いいな
ほっこりした。
なんとなくじーんとしたよ。
| mao | 2016/04/20 19:29 | URL | ≫ EDIT