学校が休みで、リビングでテレビを観ていたある土曜日。
携帯が登録されていないアドレスからのメール受信を告げる着信音を奏でた。
誰だろう、と思いながら、開封したメールの内容は次のような内容だった。
今、どこにいるの?
部屋に行って
いつものように
服を脱いで見せなさい。
俺は、コーラを飲み干すと、ゆっくりと階段を上がった。
俺の身体を見たくて、待っている女の子がいる。
またそんなことを思い、その気持ちに応えようとしていた。
それにしても、俺のメアド、何故わかったんだろう、それが疑問だった。
が、すぐに疑問は解決された。
春に卒業した女子バレー部の先輩からメアドを訊かれたことがあった。
その人と俺は、俺が1年の時の学園祭実行委員だった。
1年生の出し物を聞きまとめて、委員長だったその人に提出した際にメアドを聞かれた。
何の進展もなく、ただ事務的な連絡を二度三度した程度の間柄で、
今でもその先輩と関わりのある沙希さんが、おそらく何かの際にその人に言ったのだろう。
自分の部屋に入るのも緊張した。
そこはステージでもある。
既にギャラリーが、今か今かと開演を待ち望んでいるのだ。
俺はまるで本番を前にしたピンク系のダンサーのようだった。
部屋に入ると、ゆっくりと窓を開け放ち、ベッドに座った。
鏡で確認しなくなってから、もう2週間になる。
俺は、部屋を覗かれている被害者だったはずだ。
親切で、見せてあげているはずでもあった。
それが、見せたいという気持ちを見透かされてからは、
立場が逆転し、覗き魔達は「見てあげている」というスタンスになってしまったようだ。
でも、そんな事どちらでもいい。
俺の身体を見て、少なからず興奮している女の子がいるのなら、
この関係の、この立場のままでいい。
D&Gのカットソーを脱ごうとした時にメールが届いた。
「早く脱いでよ」。
このプレイをいったい何と呼ぶのか。遠隔操作なんとか、リモートなんとか……。
頭では、おかしな事をするなぁと思いながらも、そこは思ったとおり、刺激反応を始め、膨らんできた。
俺はメールに返信をした。
「そちらは今何人いるんですか?」
送信ボタンを押して10秒もしないうちに、
窓の向こうから着信音が聞こえた。
これには笑え、チラッと覗き窓を見た。
「7人だよ、早く脱いでよ」。
数の多さに驚いたが、俺は、
「7人?じゃあ、もう少しだけ、窓を開けてもいいですよ、
俺、そちらを絶対に見ませんから」と返信した。