三度目に会ったのはクリスマスの前日で、
俺は友人ら4人とカラオケでイヴイヴパーティをやっていた時だった。
ドリンクバーで、フリードリンク用のグラスにアイスコーヒーを注ぎ、
その中にソフトクリームをたっぷりと入れている後ろで、
「それやってももいいの?」と幼い子供の声がした。
振り返ると見覚えのある男の子が俺を見ていて、横にはその子の母親が立ち、
子供に「いいんじゃない?あんなふうにする?」と訊いている。
母親の目にはくっきりとラインがひかれ、彩られた唇には色気を感じた。
それまでとは表情を変えた女性を俺は、しばし見つめてしまい、
不思議そうな面持ちを浮かべる女性に、軽く、首だけチョコンと下げた。
「どこかで会った?」その人はタメ語で訊いた。
当然だ。どこから見ても高校生の俺への言葉はそれでいい。
むしろ突然距離が縮まった感じがして、嬉しく思えた。
「二回会ってます」
「どこで?」
「家が近所なんです」
「へぇ……いつ?」と訊かれたところで、男の子が母親の袖を引っ張った。
「お部屋に戻ってなさい、ママがコレを作って持って行ってあげるから」。
男の子は「うん」と頷くと小走りで部屋に戻った。
「家の前と、ローソンで会ってます」
「ローソン?」
「はい。ゴミ袋、ガムテ、紐……」
「あぁ、あの時?」
「はい。後ろに居ました」
「よく覚えてたね、どうして?」
どうして?と訊かれて、可哀そうだと思ってましたから、なんて憶測を言えるはずがなく、
それよりも目の前の確かな事を伝えようと、
「今日はすごく綺麗ですね」と事実を素直に口にしたが、
今思うと、少しの躊躇も無く言えたことが不思議でならない。