そう言い終えないうちに家のチャイムが鳴った。
『ダメだよ、彼女が来るんだから!』
「おじゃましま~す」
『嘘でしょ?マジで?』
「目隠しとっちゃ~ダメだからね~」
『マジでダメ!』
「目隠し、ちゃ~んとしてる~?」
『してるけど』
と言ったところで、部屋がノックされた。
「開けるよ~、目隠ししててね~」
俺はベッドに座ったまま、どうして良いのか解らなかった。
ドアが開くとその人は俺から携帯を取り上げた。
そして、ニーハイを脱ぐといつものように、両手を後ろに持っていかれて縛られた。
女子寮の窓から、歓声が上がった。
それは今まで聞いたことのない程、大きな歓声だった。
その夜の体験を、書こうか書くまいかをさんざん迷ってしまった。
これまでの体験を読んでくれた方には、愚かな少年の自虐小説につきあわせてしまい、
大変申し訳ない気持ちでいる。
俺を責める意見が圧倒的であっても、自虐小説であるから何の口ごたえもしない。
でも、あの夜の体験をありのまま書けば、彼女達を責める意見が増えるだろうし、
顔を顰(しか)めて、汚れた物でも見るような目で、小説の文字を追うことにもなるであろう。
彼女達を責めないでいただきたい。
彼女達は悪くは無い。悪いのは男であるこの俺である。
>あの夜はさぁ、寮生達の異性に対する好奇心が爆発しただけなんだ。
あやつり人形みたいに、言われるままに従った俺が悪かったんだ。
でもさ、あの夜のことを俺は〝悪い経験〟をしたとは思っちゃいない。
3年近く経った今、彼女達が「悪いことをした」と、
今現在のモラルで悔いているのなら、それはきっと〝悪いこと〟だったんだと思う。
でもね、ややもすれば被害者とも思われがちなこの俺が、
彼女達に対して、「悔やまないで欲しい!」って思ってるんだ。
俺も楽しんでいたし、あの夜に彼女達が見せてくれた笑顔や陶酔、恍惚の表情を信じていたいんだ。
若気の至りの楽しい思い出として、俺が彼女達の身体のどこかに今でも存在していて欲しいと思うんだ。
あの夜は彼女達の好奇心が爆発しただけさ。
そして抑圧されていた性欲が臨界点に達しただけ。
クリスマス・イヴというシチュエーションも手伝ったんだね。
まだ飲み方を知らない酒に乱されてしまった夜でもあったんだね。
そこに集団心理ってやつが働いちゃったんだ。
見栄を張ったり、意味をはき違えて背伸びして、大人になろうとしていたんだ。
つづく