それを話したのは今年の冬。
進級を目前にひかえていた。
春が来て、クラス変えが行われた。
進学クラスの私。廊下に貼り出されたA4の紙には、本庄君の名前もあった。
汗が滲んだ。瞬時に汗ばんだ。あんな時に帯びる汗を何汗と呼ぶのだろう。
でも、学校での本庄君はあの通り無口を決めるはずだから、話す機会も無いに違いない。
そう思うと汗もひいた。
その日の放課後、私達は教室にいた。
私は本庄君を遠くに見ながらメールを送った。
「今日から学校でしょ?新しいHRに可愛い子いる?」。
学生ズボンの左ポケットがブルって、携帯をゆっくり取り出した彼が、
教室をぐるりと見渡し、文字を打ち込んだ。
左手に握られていた私の携帯がブルって、本庄君からのメール着信を告げた。
「可愛い子なんていません」
私は思わず鼻から息が漏れて、小声も突いて出た。
「あっそう」。
亜美さんのモバゲーサイトが突然削除された日。
「強制退会ですか?」とメールを送った。
「うん、とうとうやられた」と怒ったデコの次の行、
「GREEがあるさ」と笑顔のデコが付けられていた。
勝手に亜美さんを診断させてもらうと、
寂しがり屋なのか仕事のストレスがそうさせるのか、
性依存症に着々と近づいているように思え、
その上、自分の体験をみんなに知らせることにも快感を覚える特殊な性癖の持ち主。
こんなブログを書いている私が言えた事ではないけれど、
3人目に紹介した西岡君との行為も、毎回、詳細に教えてくれた。
西岡君のことは別の機会に書くとして、
西岡君を紹介した3日後、私は亜美さんと弥生さん、
そして二人の高校時代の友達の優花さんが、
御礼に、おごってくれるということで、カラオケをすることになった。
メールで時間と場所を確認していると、
亜美さんが本庄君も呼ぼうと言いだした。
「ダメですよ、ウチ、まずいですから」と、断ったけれど、
着なくなった服、数十万円分を全部くれるという餌につられて、
結局行くことになった。
亜美さんは「偶然を装えば?」と言うし、
弥生さんは「本庄君を目隠ししちゃえば?」と言った。
「3時間も目隠しは可愛そうですよ」と私が言うと、
「じゃあシホちゃん、バレないように変装しといでよ」と亜美さんが無茶を言った。
結果、私はギトギトのギャルメイクにキャップをかぶった。
デカサンの下には真っ黒なツケマ。
親とすれ違ってもバレないぐらいの変身ぶりだった。