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小説・何も見せない-10

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本庄君は、亜美さんと弥生さんに挟まれて、
肩をすぼめて座っていた。
私が部屋に入るなり、意味深な笑みを浮かべた亜美さん。
私が本庄君の向かいに座ると、初対面なのに「久しぶり」と笑った弥生さん。
優花さんは「はじめまして」と、落ち着いて挨拶をしてくれた。
優花さんは長身のモデル体型で綺麗な顔立ち、薄いメイクが清楚感を出していた。
友達にはいないタイプで、仕草や話し方が育ちの良さを演出し、
ふんわりとした全体のイメージながら、目ヂカラのある、とても魅力的な女性だった。

そして本庄君。
なんと制服姿。
優花さんからのリクエストだったらしい。
「バカ、制服なんて着て来るんじゃねぇよ!」、複雑な気持ちを心の中で叫んだ。
彼は私が同じHRの住人だとは気づくはずもない。
どちらかというと森系寄りの私が、Ranzukiを見ながらメイクをし、
中学の友達からギャル服を借りまくった。
必要ないかと思ったけど、声や話し方も若干変えた。

亜美さんが私を“トモミ”と呼んだ。
「え?シホじゃないの?」と一瞬動揺したけど、名前なんてどうでもいい。
亜美さんの中では、シホはメールだけのつきあいで、
今後、実際に会っていろんな展開が期待できそうだったので“トモミ”と名付けたらしい。
AKBのトモチンの雰囲気に似ていたから……、と後で聞いたけど、
そんなのはありえない。
私があれほどのレベルまでの変身なんてできてやいなかった。

亜美さんや弥生さんが歌っている時、優花さんが私に話しかけてきた。
「本当は16才なんだって?」
「……、はい、絶対に向かいの男子には秘密ですよ」と、
耳うちしながら喋っていた。

2時間はすぐに過ぎた。
本庄君との会話はほとんどなかった。

アルコール類の飲み放題コースで、3人の女性達は既にかなりの量を飲んでいた。
1時間の延長を告げたところで、弥生さんが歌いだし、
曲が終わり、モニターから向かいのソファーに目を移した。

亜美さんが本庄君の股間を触っていた。

それに弥生さんが反応し、「亜美~、ここで?w」。
優花さんはさほど驚くこともなく身をのりだして笑っていた。
私の視線は釘付け、男子の股間を触っている女性を今まで直接見たことがない。
とにかく今日の私は別人、恥ずかしがることなく、
優花さんと同様に前のめりでテーブルにひじをついて、無言で見つめた。

身体に力は入っているけど無抵抗で、
下を向いて視線を自分の股間に持っていったっきりの本庄君。

亜美さんの手は“触れる”から“さわる”になり、
“撫でる”から“まさぐる”になった。

弥生さんが「感じて来た?」と聞いた。
亜美さんが「ガン起ち」と答えた。

弥生さんが本庄君のあごを上に持ち上げた。
私と視線が合い、彼はやがて目を閉じ、息を荒くした。

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