ファッションビルの前で彼氏を待っている感をまる出しにしていた女の子。
その様子を気にしながら寒さに震える俺は、
取引先からデータを渡されるだけの待ち時間。
「30分遅れます」と受信した俺のスマホまでが憎らしくなって、
乱暴にスライドさせた時に彼女のスマホも着メロのミリヤを奏でた。
無表情から戸惑いに変わり、読んでいる間に溜めていた息をフゥと吐き出した。
白い息はたちまち消えて、肩を落とした彼女の佇まいはいっそう寒さを醸した。
彼氏は来ないのか。それは確信だった。
こんな時に声をかけられる男が羨ましい。
心の隙間にスムーズに入り込める男は、
さぞかし良い思いをたくさんしているのだろうな。
この寒さの中、30分も独りで待つのは酷だった。
明日の朝にしてくれとメール送信し、前を見ると彼女と目があった。
ビルのエントランスを挟むように左右の大理石の壁に背をもたれて立つ二人。
距離にして5メートル、否もっとあるだろうか。
「来ないの?」と彼女の容姿にぴったりの声が俺の耳に届いた。
オフホワイトのショートコートはどこのブランドだろう。
茶色のバッグはMIUMIUっぽい。
脚フェチの俺がさっきからチラ見していた脚は、
ボルドーのタイツが細く綺麗なラインをまっすぐ下まで作り、
ラインが途切れた足元を飾るのは茶色のブーティで爪先は丸い。
「待ち合わせ?」。
もう一度彼女が訊いて来た。二度言わせたことを申し訳なく思い、
「来なくなりました」「そちらの待ち人は?」と二言返した。
「来ないよ」。
どうする俺。
この後、何て言えばいい?
きっと彼女はチャンスを与えてくれているんだ。
俺が発する次の言葉次第で、二人のこれからの時間の過ごし方が決まるのかもしれない。
さて、どう言えばいい?
言葉を探す俺は、彼女にはそっけなく映ってしまいそうで、
せめて言葉が見つかるまで、正直言うと、勇気が湧いてくるまで、
何か言いますよ待っててくださいね的な雰囲気を醸し出すだけで精いっぱいだった。
彼女はしびれを切らしたのかな。
俺はまた一つ女の子に申し訳ない事をしてしまったんだな。
「お腹すいたね」とまで彼女に言わせてしまったんだから。
チャンスどころかセッティングまでしてくれていることに気づいてはいるんだ。
気づいてはいるんだよ、さっきから。
誘う気持ちよりも謝りたい気持ちが俺に勇気を授けた。
「焼肉行く?」
なんてバカなことを。
一緒に焼肉を食べる男女はそのまま身体を重ねるというのは今や定説ではないか。
「あっ…いや…別に何でもいいんだけど」とごまかすと、彼女が、
「スンドゥブで温まりたい」と言った。
ということは焼肉屋でいいんだよな。
いまどき、スンドゥブの無い焼肉屋なんて無いよな。
スンドゥブ専門店も無いわけじゃなく、知ってはいるけど、
ここはあえて焼肉ついでのスンドゥブでしょ。そうでしょ。
そうしなきゃ。そうもっていかなきゃ。
「じゃあ行きますか」。
5メートル先で向かい合っていた俺達が、ようやく肩を並べて歩き出した。
今、彼女は俺の部屋で眠ってる。
寒がりだと言って、ヒーターの設定温度を上げさせて、
さらに布団にくるまって寝息をたてているけど、やっぱり熱いんだよ。
脚が布団から飛び出てる。
コートもブーティもMARC BY MARC JACOBSだった。
上下セットの白とピンクのランジェリーはどこのだったのかな。
そんなことまで気にする男は嫌われるな。どうでもいいよ。
彼女に似合っているんだからどこの服でもいい。
女性用アダルトサイトのランキングに参加中です。
「拍手」よりも下のバナーをポチッとお願いしたいのですが…すみません。女性向けAV ブログランキングへ