ある日曜日のこと。
<寮の管理人がいないから玄関から入っておいで>とメールが届いた。
行けばどうなるかはわかっていた。
それを待ち望んでいたと言っても良い。
メールを受けてから寮の玄関で潰し履きのVansのスニーカーを脱ぐまで30分。
俺はその間、シャワーを浴び、下着を取り替えた。
玄関で出迎えてくれたのはマドカさんで、音を立てないように階段を上がり、
長い廊下の突き当たり近くまで進むと、茶色のドアを開けた。
部屋は薄暗く、右半分を幾重もの布団が占領し、
トイレットペーパーの買い置きや、ダンボール箱の中には大きな鍋やフライパンが収まっていた。
「ここは物置ですか?」小声で訊いた俺に、
「そうだよ」と普通の声のトーンで言い、
「普通に喋っていいよ、ここ、布団がたくさんあるからなのかなぁ
あまり声が響かないんだよね」と言った。
正面には二重窓があり、手前の窓は木の格子がはめられたすりガラスで、
レースのカーテンが掛けられている。
マドカさんがその窓を開けると、キュルキュルと音がした。
「見てみなよ、ほら」。
指をさしたその先には、俺の部屋が見えた。
「この部屋だったんですか……」。
窓を開けっぱなしで来てしまった俺の部屋、
ベッドの四方隅々が、窓のフレームの真ん中に収まっていた。
マドカさんが布団を敷きだした。
シングルの布団を横に2枚敷くと、床の空きスペースが埋まった。
「もう一枚重ねようか?ふわふわの方がいいよね」。
俺は何の事かわからないといった表情で首を傾げたが、
これから行われることは十分に推測できていた。
「ちょっと待っててね」と、マドカさんが言い、部屋から出て行き、
3分もしないで戻った彼女の手には、黒のタイツが2足と紺のソックスがあった。
「脱いで」
「え?」
「脱いでよ、マッパ!」
「は?」
「いいから早く!」
服を脱ぎ終わった俺に、マドカさんが言った。
「手足縛っちゃうからね」
マドカさんは紺ソでまず両足首を縛った後、両手を後ろで縛ると、
「寝てっ」と低い声で言った。
音をたてないように、布団に尻をつけ、ゆっくりとふわふわの布団に身体を埋めた。
仰向けになった俺に黒タイツをねじって目隠しをすると、
「ちょっと待っててね」と、マドカさんが再び部屋から出て行った。