「ちょっと待ってて、そのまま」
そう言い終えると、窓の向こう、白いレースのカーテンが無造作に動き、
乱暴にシャカシャカとカーテンレールを滑る音が耳に飛び込んだかと思うと
窓が全開され、全裸の女体が現れた。
首から上をレースのカーテンでぐるぐる巻きにして、顔を隠していたが、
桟(さん)の少し上あたりで、黒く密集した恥毛がはっきり見えた。
右手で携帯を持ち、左手は胸を触っていたが、
その手が下がり、黒い恥毛を隠し、指がもぞもぞと動き出すと、足を広げて踏ん張った。
携帯からは彼女の桃色に染まった声が、やけにオンマイクで聞こえてくる。
俺に聞かせようと、無理にもマイクに口を近づけているかのようだ。
彼女は左手に携帯を持ち変えると、右手でソコを触りだした。
まずは薔薇の花びらの輪郭をなぞったか。親指を除いた4本の指でまさぐったか。
声のトーンがだんだん高くなるにつれ、腰のくねりも激しくなる。
くねり方が左右のものから、上下にズンズンと刻むような動きになった後、
頭を窓の左辺に付け、右足を桟(さん)の上に置いた。
大胆に膝(ひざ)を立てて、こちらに向けられた黒く揺れる部分を照らしていたのは、
俺の部屋から漏れた灯りよりも、月明かりだった。
「見て……」と彼女。
「見てるよ」と俺。
「ウチを見ながらイって……」
「うん」
俺も手の動きが早くなる。
窓の左辺にもたれながら激しく腰をくねらせる彼女の声が、
耳をすませば肉声で聞こえてくる。
二人はもはや会話などできる状態にない。
彼女は俺を見ながら、ひとりよがりな行為に溺れ、
俺はしっかり彼女を見ながら震えている。
「淫らで綺麗……」
俺は思わずそう言ったた。
彼女からは言葉は無い。かわりにトーンが更に上がる。
「イクイク……」
と言ったのは彼女が先だった。
いつでもOKの準備をしていた俺が言う。
「うん、一緒に」
彼女の腰が前に二度三度ズンズンと突き出すのを見ながら、
俺は外に向けて発射した。
その日、4度目とは思えないほどの量が放出されると、
俺も崩れ落ちぬよう、窓枠に身体をもたれた。
「はぁ」と息を漏らした彼女は、「ありがとう」と言い、窓が閉められ、
レースの白い影も元通りのスクリーン状におさまった。
「ダメだよね、ウチ」
「どこがダメ?」
「ハズいことしちゃったね、ウチ」
「後悔しないで。ありのままを見せてくれてありがとう」
「ありのまま?」
「すごい綺麗だったし。たぶん俺、一生忘れない。だから後悔しちゃダメ」
「一生忘れない?」
「うん、だからありがとう」。