次の日は朝から落ち着かなかった。
本庄君を誘わなければならない。
どう誘えば良いのか、言葉すら浮かばなかった。
私達はそれまで会話をしたことすらなかった。
私は彼を知っていたけど、彼は私を知らないかもしれない。
なにせ本庄君は、学年で上位3本の指に入るであろうイケメン。
それに対しこの私の見ためは、ごくごく普通のJK娘で個性はあまり無い。
頭の中の歪んだ自分勝手な妄想を、他人にばれないように隠しながら暮らす。
腐女子の友達とは、ヴァーチャルな夜のオカズを回しあい、
ギャルの友達からはリアルな恋愛話し、
たまーにギャル友の彼氏のH写メも拝見できる。
腐女子の友達からは妄想を手助けしてくれる素材を、
ギャルの友達からは現実の写メを、恵んでもらえる。
そんな目立たない私が、いきなり本庄君に話しかける話題なんて無かった。
他県の中学を卒業した本庄君、彼の過去を知る者は高校にはいない、
高校には、だいたいが県内や市内の中学から集まっていて、
出身中学を聞けば、どんな中学生だったかだいたい教えてもらえたけど、
本庄君に関しての情報はまったく無かった。
だからなおさらミステリアスだった。
2日間、どう話そうかを考え、悩んだ末、
私は亜美さんからモバゲーのミニメで、
暗号とカタカナ入りで教えてもらった直アドにメールした。
「私、やっぱり誘えませんでした、ごめんなさい」
返事はすぐに来た
「どんなふうに誘ったの?」
「誘ったりできません、ウチ、ヘタレなんで話しもできていません」
「そうなんだw緊張させちゃったらごめんね」
「いえ、ウチ、自分のヘタレさが情けなくって、マジごめんなさい」
メールのやりとりは一度そこで終わったけど、
次の日の朝に、亜美さんからメールが届いていた。
「じゃあさぁ、彼の行動を教えてくれないかなぁ」
翌日、亜美さんは学校近くで待機していた。
本庄君の行動を私が亜美さんにメールで報告する。
「今、まだクラスにいます」
放課後、私は隣のクラスで、友達と話しをしながら本庄君を見張っていた。
「本庄君、今から教室出ます」
「オッケーw」
私は彼を尾行する。
「校門を右に曲がりました、たぶん電車の駅です」
「オケーw途中のガストで逆ナンするよ」
「ゲットできたら教えてください、状況知りたいです」
「オケーwこっち弥生と2人だからたぶん成功すると思うw」