毎朝、桜の樹に囲まれた公園をすりぬけて歩道に出る。
日本の各地から、桜の開花が告げられる度、
樹を見上げながら、いつピンクに染まる?と問いかけていた。
全国ネットのテレビ番組から桜の話題が消えて暫くすると、ようやく開花する。
今年は公園で日向ぼっこをする時間が無かったから、瞳に桜色を焼き付けられなかった。
歩道に枝先を被せる樹は遅咲きで、先週末まで咲いていた。
遅咲きというハンデを背負いながらも、この時とばかりに咲きほこり、
一日も長く人の目を楽しませようと咲いてくれるけど、残念ながら短命だ。
人々の興味は早咲きのライラックへと移り、既に見慣れた桜の影は薄くなる。
おまけにライラックは“リラ冷え”と呼ばれる寒波まで連れて来て、
今年は雨を降らせ、強風も二日続いた。
リラ冷えが去った後は、風で枝からむしり取られ、吹き飛ばされた花びらが地面を埋め、
水たまりには無数の花びらが浮かんでいた。
そういえば昨年の秋、公園の南側の歩道一面はイチョウの黄色に染められた。
あれも冬を告げる木枯らしの仕業で、雨に濡れたアスファルトにへばりついていた。
やがて雪で歩道は埋まり、深々と降り積もる真っ白な雪面に足跡をつけた。
昨年の冬、僕のiPodでヘビーローテーションされたのは、季節外れのレゲエだった。
まだ除雪されていない歩道を凍えながら歩くも、頭の中では南国のリズムが流れていた。
12月から1月にかけて、カナダのチャートを賑わせた曲。
その曲とバンドのレビューを書こうとクライアントに提案したけど、
カナダでしか流行らなかったバンドは過去に数知れず、
Magic!というレゲエバンドもその類だというのが編集者の意見で、提案は却下された。
でも洋楽を好む女神様には、
「ねぇねぇ、これいいよ。たぶん流行るよ、全米全英では間違いなく流行る、けど、日本ではどうかなぁ?」と、
iPodのイヤホンを女神様の耳へと運び、肩を寄せて零れる音を拾っていた。
三日前にその女神様と会えた。
広めのバスルームを好む女神様。理由はアロマオイルのマッサージを受けられるから。
オイルまみれになるから専用のバスタオルは僕が持参する。
ホテルの備品を使い物にならなくしてしまうのは申し訳ない。
マッサージが終わり、バスタブで温まっていた彼女。
歌がとても上手な彼女が鼻歌を奏で始めた。
それは昨年の冬に、僕が奨めたレゲエの曲。
床を拭いていた僕は、ゆるめのあぐらで座り、バス用の椅子を両脚で抱えると、
それを叩いてリズムをとり、所々、鼻歌でハモった。
素晴らしいセッション。二人ともノリノリで、僕は椅子だけじゃ物足りず、バスタブの縁まで叩いてた。
女神様も大満足で「英語の歌詞を覚えて来るから、今度またやろうよ」って。
『いいね、絶対だよ、裸のバスルームセッション、サイコーじゃん』って。
まさかこんなふうにこの曲を愉しめるなんて思いもしなかった。
あれから三日経った今でも、まだ気分が良い。ほんとに気分がいい。
またバンドやろうかな、なんて思わせてしまうほどだ。
声が反響するバスルームから聴こえてくる女性の歌声が大好きなんです。
僕にとっては“癒される”の一言。
バスルームに二人がいて、傍らで歌ってもらうのもいいし、
ドレッサーに立つ僕の耳に、ドア越しから聴こえてくる控え目な歌声もいい。
男はそんな控え目な女性の歌声に惚れるかも。
カラオケで全力で声を張られて、引いてしまう時ってあるんだよ。
読者の女神様、演出の一つ、惚れ薬的に控え目なバスルームソングを使ってみたら?
でも西野カナとか、いつも会えなくて泣いているような曲じゃなくてさ、
スローなんだけどハッピーな曲がベスト。
是非やってみてください。
MAGIC!というバンドの「Rude」という曲です。だらしのない男が恋をして結婚を申し込むけど彼女の父親から反対されちゃう。
色々あって彼女は他の男と結婚、と思いきや、略奪してハッピーエンド。
ロミオとジュリエットみたいだよ。
記事にも書いたけど、カナダではヒットした。
英米のチャートをずっと見てた、ベスト100にも入って来なかったけど、
3週間前にトップ100圏内に、今週はトップ40圏内にランクイン。
英米ではやっとこ売れ始めました。
けどやっぱり日本で流行るかは分からない。
日本でレゲエと呼ばれている日本のレゲエアーティストの曲は、レゲエじゃないと僕は思っています。
読者の女神様ぁ~!
この夏はこの曲でキメちゃってください。
そしてこの曲を耳にしたら「あっ、涼汰が書いてたヤツ」って思い出して下さいね。
Magic!/Rude