犯されたい。もしくは乱暴に扱われたい。
若くて好みのタイプで、見知らぬ男の性欲の捌け口にされたい。
そのようなシチュエーションを思い浮かべてオナニーをしだして
もうかれこれ10年にもなる。
デリバリーのホストを呼んで、そのようにさせてみた。
思ったとおりに濡れ、何度もイッた。
従順に私の要望どおりに責め立て、最後には「ありがとうございました」と言った。
デリバリーホストが帰り、部屋で一人、飲みかけのワインを飲みほした。
あの若い男は私の思いのままに、この身体を本能むきだしで貪った。
日々の妄想の全てを体感できたはずだった。
なのに物足りなさを感じた。あんなに激しく、3回も果てたというのに。
<さっきは ありがとう、凄かったね>
私はその男にメールをした。
<こちらこそ、でも、もしかしたら満足してないんじゃないですか?>
男は私のどこを見てそう感じたのだろう。あんなに濡れて悶えたというのに。
彼には正直に言おうと決め、レスをした。
<なんでだろう、濡れて濡れて、あんなにイカせてもらったのにね>
涼汰はわかってくれるだろうか、心の底では満足できなかった理由を。
<俺、別れる時に、ありがとうございました、って言っちゃった>
涼汰はわかってた。
<ああ、でも仕方ないでしょ、仕事なんだから、ありがとうは言わなきゃね>
これは一ヵ月前のこと。
昨日、彼からメールが届いてこんな誘いを受けた。
<梨花さん、明日は時間ありますか?会いたいんですけど>
<明日OKだよ>
そこからメール2往復で、待ち合わせの時間と場所が決まった。
私と涼汰は今日、小洒落たバーでデートした。
涼汰はアルコールが飲めないので、コーラばかり飲んでいた。
私は かなりの量のワインを飲み、歩くのも若干ふらついたが、
涼汰がカラオケに行きたいというので2人で歩いた。
カラオケルームに入ると涼汰は電話をする為、部屋を離れた。
入れ替わりに若い男性スタッフがオーダーをとりにやって来た。
メニューを広げ、スウィーツでも頼もうとした時、
部屋の照明が落ち、室内はカラオケ機械から放たれるかすかな灯りが、
わずかに照らすだけになった。
その瞬間、男性スタッフが私に襲いかかった。
私が彼に身体を開くまで1分とかからなかった。
激しいキスをされ、胸に手を入れられ乱暴に揉まれた。
ショーツの中、指がせわしなく動いていた。
「え?なに?涼汰のともだち?」と訊いたところで口を塞がれた。
ショーツを膝まで下げられると、股間にむしゃぶりつきクンニされた。
若い男の息が荒くなり、彼の硬くなったモノに手を運ばれ、しごくように命令されたが、
クンニの気持ち良さに手の動きはおろそかになった。
これは涼汰の演出なのか、そうでないのか。
そうでないとしたら、戻った涼汰は驚くだろう。
涼汰は止めるかな?それとも一緒に責めてくれるかな?
クンニする彼のテクニックはかなり上手で、私は大きな喘ぎ声を出していたが、
室内で流れる音楽と、四方の部屋から聞こえる歌声にかき消された。
見知らぬ若い男に乱暴にイカされた。
身体の気持ちの良さよりも、頭の中、気持ちが震えていた。
あの男は誰だったのだろう。
携帯には涼汰からメールが2通届いていた。
<30分ぐらい待っててください、どんどん歌っててください>
<あと10分で戻るよ、待たせてごめんね>
涼汰が仕組んだ演出なのかどうか、メールを読むとわからなくなった。
「男に襲われたよ」と言おうか言うまいか。
「ごめんね待たせたね」。
涼汰が笑顔で入って来た。私は訊くのをやめた。
見ず知らずの若い男に襲われた30分間。
私がそれまでで一番感じ、身体も気持ちも震えまくった30分間だった。
私は満足感を味わった